報告書作成やマニュアル編集などをAIで自動化し、製造現場の業務時間を大幅削減
社内研修を定期開催し社員のAI活用力を底上げ
2025年1月1日に『株式会社レゾナック』の石油化学事業門を分社化し営業を開始した『クラサスケミカル株式会社』(以下、クラサスケミカル)は、1969年に操業を開始した『昭和電工(株)大分石油化学コンビナート』を源流に、50年以上にわたり九州で唯一のエチレンプラントとして操業し、自動車や最先端エレクトロニクスなどさまざまな産業で使われる素材を、安全最優先の安定操業により提供しつづけ、経済の基盤を支える重要な役割を担っている。
設備の経年化や生産年齢人口の減少などを背景にDX化推進に取り組む同社では、2023年6月より生成AI活用の検討を開始。同年秋より「ユーザーローカル ChatAI」(以下、ChatAI)のトライアルを実施した。本事例では、クラサスケミカル 大分現場力変革推進グループ グループリーダー 滝波明敏氏 及び、同グループ システム高度化チーム リーダー 首藤洋志氏に、導入の背景やChatAIによる具体的な活用法を伺った。
システム高度化チーム リーダー 首藤洋志 氏
導入背景
まずは生成AIに触れてみることが大切。高いコストパフォーマンスと快適な使用感、導入のスムーズさからChatAIに即決
同社で生成AIの検討がスタートしたのは2023年6月。滝波氏は「生成AIについては“社外秘情報を入力しなければ使っても良い”という制度はあるものの、業務には一部の社員が個人的に活用をしている状況でした。そうした中で、大分コンビナートのトップから“生成AIを業務で活用できる仕組みづくりを”との声が挙がり、生成AIツールの選定に入りました」と振り返る。
まずは予算を抑えて生成AIを試すことのできる環境で、なるべく手軽に活用方法を模索したいという考えから、無料トライアルがあるユーザーローカル社のChatAIに着目。「まずは“多くの社員が生成AIに触れることが大切”という考えでした。導入コストが安価な点、そして契約手続きから実運用までがスピーディーに進められる手軽さは大きなポイントでした。導入時に大規模なインフラや設定が必要ない簡易さ、またITに詳しくない人でも使いやすい管理画面も魅力でした」と語るのは首藤氏。
その上でトライアル期間中に、テキストの要約、アイデア出し、コーディングにも使えそうだという手応えを感じられたのも決め手に。「ユーザーローカル社の勉強会に出ると、初心者でも使えるような活用方法を学ぶことができ、導入前に具体的な活用イメージを持つことができたのも大きなポイントになりました」(滝波氏)と、コストパフォーマンスと操作性、機能面でもChatAIの価値を感じることができたという。
社内周知については、首藤氏が生成AIについてのセミナーを定期的に開催。「“まずは触れてみたい”という潜在的な声が想像以上に大きかったのだと感じました。セミナーの内容は、弊社の業務にフィットした活用方法の紹介をメインに月に2回ほど行いました」(首藤氏)100名でスタートしたトライアル期間を経て、2024年1月の本格導入時には、利用希望者が2倍に増え、200名でのライセンス契約でスタートした。
導入初期の社内周知セミナーでは、簡単で効果的な事例と、部署ごとに活用できる具体例を紹介していくという工夫を盛り込んだ。「例えば、営業の部署では、新規顧客開拓時のアイデア出しや営業資料作成など、製造や設備保全の部署では専門的な検索ノウハウなどと活用方法が全く異なりますので、部署ごとに開催されている定例会にも積極的に参加して、ChatAIのセミナーを行いました」(首藤氏)生成AIをどう使えばいいかわからないという人でも、すぐに業務に活かせるよう、セミナーは部署ごとに開催し、1時間で具体的な活用方法を10ケースほど紹介していくことで、「生成AIを業務に活用したい」という声が部署を問わずに増えていったという。
活用方法
「ドキュメント機能」で社内活用促進
コアユーザーによる活用事例の情報発信も利用者拡大に寄与
社内で生成AIの活用が浸透していく中で、大いに役立っているというのが「カスタムチャット機能」だ。「カスタムチャット機能では、通常のチャット機能とは切り分けて、管理者側で用途を限定し、プロンプトを指定したチャットを作成できます。初心者のユーザーでもプロンプトを入力せずに利用できるので便利です。設定も初心者でも簡単に設定できる仕様で、作った瞬間に公開もできるので、“こういうチャットを作って欲しい”という依頼が来てもすぐに対応できるのが魅力です」と首藤氏。
また、「ドキュメント機能」の活用も進んでいる。利用ガイドラインを策定し、各部署が安心してChatAIを活用できる体制を整えながら、各部署ごとに資料をアップロードできる環境を用意。加えて、過去の事業実績など機密性の高い情報については、フォルダ単位でアクセス権限を設定し、必要な部署のみが閲覧できる体制を構築している。「ChatAIを活用する中で、セキュアな環境で使える安心感が社内でも浸透し、部署ごとに業務内容に特化した資料共有・ドキュメント検索が徐々にできるようになり、利便性も高まりました。実際に活用してみると、資料探しに取られていた時間・工数が削減され、快適ですね。また通常の検索でも、WEB検索よりも迅速に求める回答を得ることができて大変便利です」と滝波氏。
ChatAIの活用が進む中ででてきた活用事例は、コアユーザーにメルマガ作成やポータルサイトに動画マニュアルを設置するなどして情報発信をしてもらうことで、利用者の拡大につながったという。
さらに、新規ユーザーに対して、利用ハードルを下げる工夫も行っているという。首藤氏によると「こんなにも便利で楽しく使えるよ、と広く伝えることで活用促進につながると感じています。例えば、ChatAI利用のとっかかりとして多いのは画像生成機能。“こんなことができるんだ!”という驚きから実際の利用につながるユーザーも多くいます。さまざまな利用促進施策の結果、業務利用率は右肩上がりで伸びているという。
効果・成果
導入1年で利用者は倍増、月間チャット数は8000件以上
ChatAIが社員のスキル向上と成長に直結
当初200名でのライセンスでスタートした利用者は、現在では500名に倍増、毎月8000チャット以上が利用され、業務効率化効果は月に250時間を試算できるまでに。利用率は伸び続けており、さらなる業務時間・工数の削減も見込めているのだという。
「ChatAIの主な用途としては、検索の代替が約36%、文章校正や文章の要約が約20%、コーディング関連のサポートなどが10%となっています。検索や校正、翻訳といった用途では業務時間の削減効果があがっているほか、プログラミング知識のなかった社員が簡単なコーディングを行えるようになったなど、スキル向上にもつながっています」と首藤氏。
「私自身、今ではWEB検索よりもChatAIで検索する機会が増えているんです。弊社の業務においては、特有の技術情報を調べる機会も多いので、そういうケースではヒット率はグンと高くなります。利用者も増え、社内データのドキュメントも徐々にではありますが、ドキュメント検索機能で利用できるようになってきているので、利用価値は今後ますます高まるのでは、と感じています」と語るのは滝波氏。
今後のさらなる活用について伺うと「弊社には過去事例など紙ベースの資料もまだまだあります。こうした紙で残っている資料をデジタル化し、適切に要約して次代に生かしていきたいと考えています。埋もれてしまっている紙資料の過去の事例や技術面や安全面のノウハウを活かすために、有効なツールになると感じています」と語る。
「ChatAIを導入したことで、社員のみなさんにとって“できることが増えた”という実感があります」と話すのは首藤氏だ。「以前であればコーディングや効率化のアイデアなど詳しい人に聞いていたことが、ChatAIを使うことで自己解決につながり、社員それぞれの成長の機会にもなっているのはとても大きな効果です。今後は製造現場のオペレーターにもアカウントを付与し活用していくことも視野に入れており、製造現場での効率化にもつなげることができると思っています」と笑顔を見せた。
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