海外文書の翻訳・要約を大幅短縮、事業戦略立案も生成AIで精度向上
老舗食品商社・石光商事の生成AI導入事例

1906年に創業し、コーヒー・紅茶・酒類を主として食料品の輸入・製造加工や日本商材の輸出など、多岐にわたる食品事業を展開している食品商社の『石光商事株式会社』(以下、石光商事)。創業から120年近い歴史を持つ同社は「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」という経営理念のもと、世界の食の幸せに貢献することをミッションに掲げている。国内外にあるグループ会社との連携による広い販路を強みとし、中期経営計画では海外売上高を2025年3月期の17%から2028年3月期には25%を目指すなど、グローバル展開を加速させている。

同社はデジタル化やAIの活用を重視する経営陣の意向のもと、業務効率化と生産性向上を目指し、「ユーザーローカル ChatAI(以下、ChatAI)」を導入した。ChatAIは翻訳や議事録作成、組織運営など幅広い用途で使われ、月間では7割ほどの従業員がアクティブユーザーとなっている。ここでは、ChatAI導入の背景や具体的な活用方法などについてお話を伺っていく。

石光商事株式会社
石光商事株式会社
管理部 副部長 仲田 隆光 氏
管理部 情報システムチーム 中条 陽美 氏
経営戦略室 田中 聡美 氏

導入背景

セキュアな環境で使えることは絶対条件
ChatAIはトライアルから始められて、コストも抑えられるため導入を決定

ChatAI導入以前から、石光商事では「翻訳業務」や「議事録作成」といった業務の効率化に課題を感じていた。石光商事では海外との取引が多く、長文の多言語の資料を扱うケースが少なくない。しかし、語学が堪能な社員は限られており、特定の担当者に業務が集中しがちだったという。仲田氏は「簡単な翻訳であれば自分自身で翻訳できるものの、長文の翻訳やビジネス用語を多く含んだ資料の翻訳については、語学に長けた社員に依頼するしかありませんでした。しかし、その担当者が忙しいとすぐに翻訳してもらえず、リードタイムが長くなってしまうのが課題でした。Google翻訳のようなツールも利用しましたが、細かいニュアンスが伝わらず、業務では使いづらかったですね」と当時の業務を振り返る。

また、議事録作成についてはWeb会議の増加に伴い、文字起こしサービスを利用していたものの、会議内容を正確かつ効率的に要約する作業には数時間を要していた。「要約サービスはいくつか試しましたが、精度の面で物足りなさを感じていました」と仲田氏。

管理部 副部長 仲田 隆光 氏
管理部 副部長 仲田 隆光 氏

そこで生成AIが台頭する中、石光商事でも多くの社員が個人でChatGPTなどに触れ、手探り状態で業務効率化の可能性を探っていたという。しかし、業務で生成AIを活用するうえで、大きな課題として浮上したのが「セキュリティの担保」だった。業務利用においては、機密情報や個人情報の漏洩リスクが常に付きまとうため、安心して利用できる環境が不可欠だ。

「ChatAIでは、本番環境と変わらない強固なセキュリティでトライアルをすることができるため、社内利用の合意形成が非常にスムーズでした。まずは翻訳や議事録作成への活用から始めましたが、その後ChatAIで開催される定期的な勉強会に参加することで、活用の幅を広げることができました」と仲田氏は語った。

石光商事では海外との取引が多く、機密情報や個人情報を取り扱う機会が頻繁にあるため、情報漏洩のリスクは極めて重要視されていた。「ChatAIの導入と同時に、今後はChatGPTやGeminiなど外部の生成AIサービスを、業務目的で直接使わないことなどを示したガイドラインを作成しました」と仲田氏は教えてくれた。

業務で生成AIを活用する際の注意点などをまとめた生成AIの利用ガイドラインを作成し社内に周知している
業務で生成AIを活用する際の注意点などをまとめた生成AIの利用ガイドラインを作成し社内に周知している

導入の決め手となったのは「セキュリティの担保」と「トライアルで始められること」だけではなく、費用対効果の高さも大きな魅力だったという。「ChatGPTを社員1人ずつ契約するよりも、ChatAIを導入する方がコストを大きく抑えられます。この圧倒的な価格差は、会社として導入するうえでのコストメリットが非常に大きかったですね」と仲田氏は語る。

活用方法

少人数の説明会や社内事例の共有でアクティブユーザーは7割近くに
翻訳などの想定した業務にとどまらず、会社の戦略作成にも活用

ChatAIの導入にあたり石光商事では、生成AIの利用を希望するトライアルユーザーを立候補制で募集した。これは、受け身ではなく積極的にAIを活用しようとする意欲の高い社員に利用してもらうことで、効果的な活用事例を見つけ出し、社内での浸透を促進する狙いがあった。中条氏は、当時の募集状況について「社内掲示板で募集をかけたところ、20名程度の応募がありました。応募者の中にはシステムに明るい方だけではなく、生成AIを使ってみたいという意欲のある方が部署や役職を超えて集まってくれました。募集のタイミングで、想定されるChatAIの使い方や効果も合わせて募集時に掲載したことで、多くの方に興味を持っていただけたと思います」と導入時の様子を振り返る。

管理部 情報システムチーム 中条 陽美 氏
管理部 情報システムチーム 中条 陽美 氏

トライアル期間中は隔週でミーティングを開催し、ユーザーはChatAIの活用状況や得られた効果などを丁寧にヒアリングした。「実際に、ミーティングではドキュメント検索機能の活用など、手探りの中でもうまく活用できた事例を確認や共有ができたので、有意義な時間となりました」と中条氏は話す。ミーティング以外でもグループチャットを活用して情報共有を行い、活用のヒントを共有し合っていたそうだ。

その後、ChatAIを正式導入した石光商事では、積極的に活用する社員と、なかなか利用が進まない社員で二極化してしまったという。しかし、今では月間のアクティブユーザーが7割近くにのぼる。ここまで浸透した背景には、少人数制での勉強会や、個人間での活用方法の共有があるという。田中氏は「私自身がChatAIを使って便利だと感じているので『ChatAIをこのように使うと効率化できますよ』と周りの社員に積極的に話しています。実際に便利さを見てもらうと『自分も使えるかも』という意識が芽生えるようです。なかなか利用してくれない利用者に対しては、セミナーのような全体的なアプローチよりも少人数での説明会や、チームごとのアプローチの方が質問が出やすいため効果的だったと思います」と教えてくれた。

経営戦略室 田中 聡美 氏
経営戦略室 田中 聡美 氏

現在、石光商事ではChatAIは多岐にわたる業務で活用されている。最も利用頻度が高いのは、導入前から想定されていた「翻訳業務」だ。営業部門はもちろんのこと、海外のグループ会社とのやり取りが多いバックオフィス系の部署でも、現地の事例報告書や論文の翻訳に活用している。「ChatAIの翻訳精度はGoogle翻訳よりも格段に高く、微妙なニュアンスまで正確に読み取ってくれるので、専門性が高い翻訳には欠かせません」と仲田氏はその性能を評価する。

社内の利用用途をカテゴリ別に分類した結果
社内の利用用途をカテゴリ別に分類した結果

「翻訳業務」の他、「用語解説」「専門業務の相談」の活用も多い。たとえば「社内交際費と社内会議費との違いは?」というような簡単な用語解説から、「持分法適用会社株式を清算した場合の為替換算調整勘定はどのように処理すれば良いですか?」といった専門的な業務相談の利用だ。「以前はネットで連想する単語を入力して調べるしかありませんでしたがChatAIでは自然言語で質問でき、さらに深掘りもできるので、調べる手間と時間が大幅に削減されました」と仲田氏はその利便性を語る。

また、「戦略作成」について使われることもあるという。実際に仲田氏は中期経営計画の策定においてChatAIを壁打ち相手として活用したようだ。仲田氏は「特定のテーマについて、どういう取り組みができるか、どんなリスクがあるかなど、ChatAIと壁打ちをすることで自分の固定観念にとらわれない新しいアイデアや、想定していなかったリスクを洗い出すことができました」と、戦略的な思考を深めるうえでの貢献を強調する。この中期経営計画策定の内容確認に関わった田中氏も、「ChatAIがなければ、もっと時間がかかっていたはずです。論理的で精度の高い計画策定に大きく貢献してくれました」と語る。

その他にも、コーヒーなどの食品を扱う石光商事では、コーヒーの試飲会テーマのアイデア出しや報告書の作成といった業務でも活用が進んでいるという。

石光商事株式会社のPickupプロンプト
イベントを企画するためのプロンプト
コーヒーの試飲会を企画しています。
以下のコーヒーを使いたいのですが、試飲会のタイトルやテーマを考えてください。
<ブラジル>・ショコラ・プラナウト
<コロンビア>・グランドロック・カウカアモール
<中米>・アゾテア・ウエウエファンシー・オリエンテ・ブルーレイクorニカラグアサンタアナ
報告書の添削をするためのプロンプト
あなたは食品商社の品質保証担当者です。
顧客に提出する苦情報告書の添削を行っています。
(報告書)の内容をすべて読み、(命令)に従って修正すべき点を漏れなくすべて指摘してください。 修正すべきか不明確な箇所は適当に指摘せず、分かる範囲で、できるだけ正確に指摘してください。

効果・成果

翻訳・要約・議事録作成などの作業時間が4分の1に削減
知識がなくてもExcelでマクロを組めるようになり業務効率化を実現

ChatAIの導入は、石光商事の業務効率を大きく向上させたという。「翻訳業務では、これまで20分かかっていた作業が約5分にまで短縮されました。英文の要約も、以前は30分かけて読んでいたものが、ChatAIを使うことで瞬時に完了します。議事録作成についても、録音を聞き直して文字起こしを確認し、要約するという作業で2時間かかっていたところを約30分で完了するようになりました」と中条氏は、4分の1の時短効果を実感している。他にも、報告書の草案作成時間が大幅に短縮されるなど、作業効率の向上を感じているようだ。

時間短縮だけでなく、業務の質も向上している。田中氏は「長文の開示文書や論文の英訳はニュアンスが重要であるため、専門のネイティブスピーカーにしか依頼できませんでした。しかし、ChatAIは要件を伝えるだけで、すぐに質の高い翻訳を返してくれます。以前はブラジルにいる社員に翻訳を依頼することもあり、返信を待つだけでも1日以上かかっていました。ChatAIのおかげで日本語版の文書をすぐに開示できるなど、タイムラグなく業務を進められるようになったのは大きなメリットです」と、スピードと正確性の両面での向上を強調する。

社内でよく活用されているカテゴリを、業務効率化に繋がっている「業務効率化領域」と業務の品質向上に繋がっている「品質向上領域」で整理した結果
社内でよく活用されているカテゴリを、業務効率化に繋がっている「業務効率化領域」と業務の品質向上に繋がっている「品質向上領域」で整理した結果

幅広い用途でChatAIを活用している石光商事では、確実に社内への浸透も進んでいる。直近2週間のアクティブユーザー数は全体の約半数にのぼり、月間では7割近くの従業員が利用している。特に半年ほどでアクティブユーザー数は約1.4倍に増加した。これは継続的な勉強会や具体的な活用事例の共有が実を結び、多くの従業員がChatAIの効果を実感している証拠だと言えるだろう。

今後について中条氏は「ChatAIの利用率をさらに高め、全員が日常業務で当たり前のように使いこなせる状態を目指したいです。そして、ChatAIを使うことでこれだけ業務効率が上がったと自信を持って言えるような、石光商事独自の活用方法をさらに見出し、広げていきたいと考えています」と語る。

また、将来的には石光商事の成功事例をもとに、国内・海外のグループ会社へChatAIの展開も視野に入れている。「私たちが実践してきた活用事例を共有することで、グループ全体の業務効率化にも貢献できると信じています」と田中氏は、ChatAIが石光商事グループ全体の生産性向上に寄与する可能性を示してくれた。

石光商事株式会社

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