ChatAIで年間1,000時間の業務削減を実現
社内報・勉強会で利用促進、導入9ヶ月で利用者9倍へ

2005年8月、『全国農業協同組合連合会』の鶏卵販売事業の移管を受け、『全農鶏卵株式会社』と合併し、鶏卵流通の専門販売会社として誕生した『JA全農たまご株式会社』(以下、JA全農たまご)。鶏卵業界のリーディングカンパニーとして、鶏卵の生産、仕入れから、鶏卵および加工品の製造販売、養鶏飼料の開発、さらに鶏卵相場の発表など多岐にわたるサービスを展開している。

国内自給率96%を誇る鶏卵の生産基盤を守り、流通を調整しつつ安定供給を行うことがミッションのJA全農たまご。近年では、社員の生産性向上と業務効率化を目指し、DXを推進しており、2024年、その取り組みの一環として生成AIツールの導入検討がスタート。低コストで使用感が良く、ユーザーの管理が容易という観点から「ユーザーローカル ChatAI」(以下、ChatAI)を導入した。今回は、同社のChatAIの活用方法について詳しく伺っていく。

JA全農たまご株式会社
JA全農たまご株式会社
経営企画本部 経営企画部 システム課
古田 将司 氏、伊藤 芳明 氏

導入背景

複数の生成AIの最新モデルを固定料金で自由に使い分け
まずは手軽に試したい導入初期にはうってつけ

ChatAIの導入について、古田氏は次のように語る。「全国の生産者や卸先などの取引先との調整や、たまごの相場情報・業界ニュースの発信など、非常に煩雑だった日々の業務を効率化できないかとの思いと、“まずはトライしてみよう”という社内風土から、2024年に生成AIの導入をスタートしました。選定を進めていく上で、セキュリティ面の信頼性と迅速な導入(5営業日程度)が可能な点、また管理画面の使い勝手が良い点から、ChatAIの導入を即決しました」

JA全農たまご株式会社 経営企画本部 経営企画部 システム課 古田 将司 氏
JA全農たまご株式会社 経営企画本部 経営企画部 システム課 古田 将司 氏

伊藤氏も「加えて、会話数で料金が高くなる従量課金制ではなく、どれだけ活用しても固定料金というのも大きな魅力です。さまざまな活用ケースを試してみることから始めたい当社にとっては、ChatAIはうってつけのツール。しかも、ChatGPTやGemini、Claudeといった主要生成AIモデルの最新バージョンを、1つのプラットフォームで使える快適性も良いですね。各モデルによって得意分野が違う中、手軽に試せるのは大きな魅力です」とChatAIを評価する。

追加料金がかからず、最新のLLM(大規模言語モデル)が利用できる
追加料金がかからず、最新のLLM(大規模言語モデル)が利用できる

活用方法

コーディングからExcel作業の自動化、文章チェックまで幅広く活用
社内報や勉強会、オープンチャットを通して、基礎知識の浸透と利用促進を実現

導入直後の最初の4ヶ月は、まずは限定的なユーザーによる試験的な利用を進めた。エンジニアでもある古田氏は「実際に試してみると、GAS(Google Apps Script:Googleのサービスを自動化できるプログラミング言語)やSQL(Structured Query Language:データベースを操作するための言語のひとつ)を書かせたり、コーディングについていくらでも質問できたりすることのメリットがとても大きいなと感じました。また、既存のシステムでは対応できない業務も、ChatAIを使ってスプレッドシートのマクロを組むことで自動化でき、当社の業務効率化に有効だと感じています。こうした環境の構築とともに汎用性の高いプロンプトの登録を進めました」という。

このような取り組みの一例が、たまごの在庫管理などを行うオペレーション課での活用だ。同課では、これまでシステム上の在庫数と物流拠点の実際の在庫数のチェック作業は、システムのデータと物流拠点のFAXからそれぞれを手作業でExcelに入力していたという。「各方面のデータを自動で拾って入力できたら、かなり効率化できるのではと考え、ChatAIを活用して、部署ごとにExcelに入力していたデータを共有スプレッドシートに収集し、自動転記できる仕組みを構築しました」と伊藤氏は説明する。

JA全農たまごのPickupプロンプト
シート構成や出力条件を指定して、GASのコードを作成するプロンプト
あなたはGoogle Apps Scriptに詳しいエンジニアです。

以下の点に注意して、高品質なGASのコードを生成してください。
コード生成するためにそのほか足りないことがあれば質問してください。
## 要求仕様
## ●●シート
### 項目
- シート名: ●●
- ヘッダー行: 1行目(項目:{ここに列名をそのまま貼り付け})
- データ: 2行目以降
### サンプルデータ
●●●●
## ▲▲シート
### 項目
- シート名: ▲▲
- ヘッダー行: 1行目(項目:{ここに列名をそのまま貼り付け})
- データ: 2行目以降
### サンプルデータ
名前
●●●●
## コードの質
- GASで実現が難しい内容であれば、コードの回答はせず「できません。」と回答すること
- マジックナンバーは使用せず、定数として定義する
- 多重ループ処理を極力避け、効率的なロジックを採用すること

他にも、メール文章の作成や契約書のチェックなどにも活用している。古田氏は「文章のチェックだけでなく、複雑な社内文書の要約など、用途に応じてさまざまな使い方ができるので、ChatAIは活用幅が広いと感じています。」とツールの利便性を語る。

ChatAIの利用を進めつつ、生成AIの社内周知にも取り組んだ。社内報の作成を担当している伊藤氏は、生成AIの基礎情報や便利な使い方などを特集し、社内周知を図ったという。「生成AIツールは導入した後、社内に周知して使ってもらうことが最も大変だと感じていたので、注力する必要があったと感じています。社内報の反応を見ながら、各部署での課題点などをヒアリングすることで、ChatAIを使った自動化施策のアイデアを広げていきました」と伊藤氏。

JA全農たまご株式会社 経営企画本部 経営企画部 システム課 伊藤 芳明 氏
JA全農たまご株式会社 経営企画本部 経営企画部 システム課 伊藤 芳明 氏

また、定期的に生成AIの社内勉強会を実施しつつ、10月にはオープンチャットによる情報共有をスタートさせ、全社員を集めたChatAIの体験会も開催。基礎知識の浸透と利用への不安解消によって、ChatAIの利用者は増え続けているという。こうした経験から伊藤氏は「知識だけでなく実際に触ってみることで、自分なりの活用方法や使い勝手の良さを実感できるのがChatAIなので、使い始めの方には、使い方を1対1の伴走型で教えていくことが大事だと感じています」と社内への浸透のポイントを語る。

生成AIの勉強会の様子
生成AIの勉強会の様子

12月には「生成AIで実現する業務改善!2時間で学ぶ次世代の自動化」と題したVBA(Visual Basic for Applications:Officeソフトを自動化するプログラミング言語)やGASといったプログラミングの勉強会も実施した。導入から9か月ほどでユーザーの利用ハードルが下がり、中には“コードを書いてみよう”というユーザーも出始めており、活用意識も高まってきたという。

効果・成果

社内浸透への近道は"成功体験"から
導入から1年足らずで、ChatAI利用者は約9倍
オペレーション課では年間1,000時間の業務削減見込みも

社内報や体験会など社内周知に注力してきたJA全農たまごでは、ChatAIの利用者は1年足らずで導入当初の約9倍までに増加し、そのうちの56%がアクティブユーザーとなっている。月間800件程度だったチャット数も、10月のオープンチャット開設と体験会を経て月間約4,500件にまで急増した。「一度使ってみれば、生成AIがグッと身近になると感じています。“まずはChatAIに聞いてみよう”から始められたので、以前は億劫だった業務のハードルが下がり、ChatAIを利用することで、これまでよりも業務効率化が進んだことを実感してもらえていると思います」と古田氏。

特に、オペレーション課では、ChatAIを活用し手軽にマクロを作成できるようになったことで、Excelに手作業で入力していた業務の自動化に成功し、課を越えたデータの共有がスムーズになった。今まで、1日ごとに3時間以上かけていた業務がわずか10分程度に削減でき、年間で1,000時間の削減効果を見込んでいるという。

さらに、鶏卵情勢を報告する資料の作成や、画像生成機能を活用した新製品のパッケージのテスト作成、さらに品質管理部門と連携して、たまごの知識や品質に関するよくある問い合わせへの回答案の作成など活用幅は広がり続けている。

「業務効率化が進むChatAIをせっかく導入したので、全社員に一度は使ってもらいたいですね。利用者は増えていますが、今後も社内報で定期的にChatAIの情報を伝えるなど、さらに周知活動をしていきたいです」と伊藤氏。古田氏は、今後の展望について「生成AIとコーディングの相性は抜群です。プログラミングができなくても、プログラミング的な考え方を持っているかどうかで仕事の進め方が変わると感じていますので、今後もGASやVBAの社内勉強会を開催しながら、生成AI活用を全社的に広めていきたいです」と語った。

利用申し込み

  1. 同業企業様、学生の方のお申し込みはご遠慮いただいております。
  2. 法人アドレスでお申し込みください。(フリーアドレスでのお申し込み不可)
  3. 弊社担当より製品説明会や勉強会などのご案内の連絡をさせていただくことがあります。
  4. ご記入いただいた情報につきましては、カタログ資料の送付や弊社からのご連絡の目的以外に利用することはありません。プライバシーポリシー
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