庁内全職員、約8,000名へChatAIを展開。
生成AIの活用で、行政業務の効率化・質の向上とDXを推進。
日本列島のほぼ中央に位置し、清水寺や二条城など合計17もの世界文化遺産を有する京都府。250万6,128人の人口(令和7年9月1日時点)に加え、8,425万人もの観光入込客数(令和6年)を抱える京都府では、行政が対応すべきニーズの複雑化と増大が続いている。全国的な少子高齢化と生産年齢人口の減少も進む中、京都府は「デジタル政策推進課」を筆頭に、デジタル技術を活用した業務改革を推進している。その策の一つとして、令和7年4月に「ユーザーローカル ChatAI」(以下、ChatAI)を全庁に導入した。
京都府独自の膨大な「手引き」や「通知文」をChatAIが正確に参照・回答する「RAG機能」は、業務効率化に大きく貢献。導入後は、職員の「まずAIに聞く」という自己解決文化が定着し、問い合わせ業務の「質的変化」という成果も上げている。ここでは、ChatAI導入の背景から行政機関ならではの活用法、そして今後の展望などについてお話を伺っていく。
課長 後藤 幸宏(写真右)
主事 飯村 海斗(写真左)
導入背景
日々進化するAIに対応するため、オンプレミス型ではなく、クラウド型ツールを選択。大量の内部資料を読み込ませて回答できるChatAIで、行政で必要不可欠な正確かつ迅速な対応を可能に
日本は1995年をピークに生産年齢人口が減少の一途をたどっており、2065年にはピーク時の約半分になると見込まれている。これは労働力不足や経済規模の縮小といった深刻な社会課題に直結する。「人口の減少により、高齢者の孤独死といった問題や気候変動による猛暑・豪雨災害など、地域課題は複雑化しています。それに伴い、行政に対するニーズは多様化する一方です」と後藤氏は現状を語る。
こうした状況の下、多様化する行政ニーズに対応しつつ、業務の自動化・効率化を図ることは喫緊の課題だ。京都府では、職員一人ひとりが主体的にデジタル技術を活用し、業務を推進することが重要であると考えた。
その解決策の一つとして注目したのが、生成AIだ。「生成AIは、文書の検索やアイデア出しなど幅広く活用できます。従来のRPAなどと比較しても、自然言語で容易に操作ができ、専門的な知識を持たない職員でも使える特徴があるため、全庁で活用を進めています」と後藤氏は教えてくれた。
庁内で令和3年度に発足したデジタル政策推進課は「庁内の業務改革」と「地域のデジタル化推進」の両輪で京都府のDXを牽引する組織だ。世間で生成AIが急速に普及し始めた令和5年頃、京都府でも本格的なAI導入の議論が始まった。
生成AIの導入にあたり、京都府では「導入形態」「情報管理」「著作権対応」の3つに焦点を当てた。導入形態については庁内で機密情報を扱うことを考慮し、独自のサーバーでAIを構築するオンプレミス型も提案された。しかし、「オンプレミスで構築した場合、日々進化する最新の言語モデルへの更新対応や、その費用対効果を考えると現実的ではありませんでした。そこで、セキュリティが担保され、且つ、庁内にある膨大な資料を参照し回答を生成するRAG機能を備えたクラウド型のAIツール探していたところ、ユーザーローカル社のChatAIを見つけました」と飯村氏は当時を語る。
京都府では、多くの事務処理が規定や通知文に基づいて行われる。ChatAIでは、読み込ませる資料を加工・編集せずにPDFのままアップロードできる手軽さと、回答に参照元が明示されるのが特徴だ。「どの手引きに基づいているか」を職員自身がその場で確認できる機能は、業務の正確性と信頼性を担保するうえで魅力的だったという。
さらに「複数かつ最新の言語モデルが使えること」や「ユーザーニーズに応えるアップデートの速さ」「管理側とユーザー側の双方にとっての使いやすさ」もChatAIを導入する決め手となった。
活用方法
庁内の事務手続きをAIに相談することで膨大な資料を探す時間や手間が劇的に減少。政策や企画立案にAIと議論することで、多様な観点を取り入れた意思決定を後押し
ChatAIの活用を検証する際、まずはRAG機能のもととなる内部資料を集めるため、各制度を所管する部署への説明を実施した。「新しい取り組みを始める時は、『自分の業務量が増えるのでは?』と懸念され、構えてしまうケースがあります。しかし、ChatAIは既存の資料をそのままPDFなどで入れるだけで、高い精度の回答が出力されます。つまり、新しい作業負担がほとんど発生しません。この点をアピールしたところ、庁内では前向きな声ばかりでスムーズに導入が進みました。本当に良いサービスに出会えたと満足しています」と後藤氏は教えてくれた。
ChatAIの浸透を促進するため、京都府はユーザーローカルと共同で勉強会やワークショップを開催した。「ワークショップでは、京都府の業務に沿った『行政職員としての使い方』などを紹介しました。参加した職員からは『こんな風に使えるのか』と好評で、各勉強会やワークショップすべてで満足度95%以上という高い結果が出ました」と飯村氏。
他にもTeamsや庁内掲示板を使い、AIに関する最新情報や便利な使い方を「AI News」として定期的に発信したり、職員が自由にAIに関する情報交換を行える場としてTeams内に「AIラボ」を設けるなどChatAIの活用を促進する施策を行っている。
ChatAIの活用において利用頻度が高いのが、RAG機能を用いた「会計事務」や「文書事務」などの庁内資料検索だ。行政の事務手続きは細かいルールに基づいて行われ、後藤氏は「例えば、物品を購入する際の見積もり合わせでは『見積もりを原則三社以上から取ること』と定められています。しかし、現場では『どうしても二社しか見積もりを出してくれなさそうだ』といった疑問が日々発生します。そういった業務上の不明点を解決するために職員は、分厚い紙の手引きをめくるか、過去の膨大な通知文を探さなくてはなりません」と、庁内の業務について説明。
この「資料を探す」という作業は、職員にとって大きな負担となる。分厚い紙の文書から探し出す必要もあれば、ポータルサイトにデータが掲載されている可能性もある。膨大な量の資料から求める回答を探し出すのは労力がかかり、最終的に求める情報が見つからないケースも考えられる。「ChatAIに庁内の資料をアップロードしておけば、こういった業務上の不明点や質問も、生成AIを活用してすぐに参照するべき資料を見つけ、事務処理の進め方なども要点を絞って回答してくれます。どこにあるかわからない、存在しないかもしれない資料を延々と探し続けることがなくなったのは嬉しいですね」と後藤氏は述べる。
また、資料のQ&A作成にもChatAIを活用しているという。生成AIに要項、要領を丸ごと読み込ませれば、『想定される質問』と『それに対する回答』をセットで自動生成が可能だ。
他にも京都府では「全自動AI討論会」と称し、議論のシミュレーションをAIと実施する取り組みを行っている。たとえば、『都道府県庁の政策立案を支援するファシリテーター』という役割を生成AIに設定し、指定したテーマに沿ってあらゆる視点から論点を洗い出しや議論をAIとシミュレーションしています。AIと議論をすることで、職員だけでは思いつかない視点を得られ、視野を広げるのに役立っています」と飯村氏は教えてくれた。
あなたは、都道府県庁の政策立案を支援する熟練のファシリテーターです。
これから指定するテーマについて、多角的な視点から論点を洗い出し、深掘りするための架空の会議をシミュレーションしてください。 最終的に、その会議の結果を政策形成に資する形の「論点整理レポート」としてまとめてください。
<ユーザーが指定するテーマを入力>
以下の5つの役割を参考に、今回のテーマに最適化されたペルソナを5人設定してください。
各ペルソナの背景、価値観、現在の立場、テーマに対する基本的なスタンス(懸念点や期待など)を詳細に記述してください。
・ベテラン職員(現実主義者):40代後半〜50代。複数の部署を経験し、前例や既存の法律・条例、予算の制約、他部署との調整の難しさを熟知している。安定的な行政運営を重視する。
・若手職員(デジタル推進派):20代後半〜30代前半。デジタル技術や新しい考え方に明るい。
既存のやり方にとらわれず、効率化や新しい価値の創出に意欲的。住民サービスの向上を第一に考える。
・地域の住民代表(生活者視点):50代〜60代。長年その地域に住み、地域の事情に精通している。
行政の決定が日々の生活にどう影響するかに最も関心がある。特に高齢者や子育て世代の視点を代弁する。
・外部の専門家(学術的・客観的視点):40代。大学教授や研究機関の研究員。テーマに関する専門知識が豊富で、国内外の先行事例や客観的なデータに基づいた意見を述べる。長期的な視点を持つ。
・関連する民間企業の担当者(ビジネス視点):30代〜40代。テーマに関連する産業(例:観光業、IT企業など)の現場で働いている。収益性、実現可能性、市場のニーズといったビジネスの観点から意見を述べる。
・各ペルソナのキャラクターを厳密に守り、一貫した発言をさせてください。
・総文字数が日本語で9,000字以上になるまで、活発な議論を続けてください。
・各ペルソナが少なくとも4〜5回は発言するように、議論を進行してください。
・単なる同意や意見の繰り返しは避け、「深掘りする質問」や「別の角度からの意見(横展開)」を重視してください。
・批判的思考(クリティカルシンキング)を最大限に活用し、メリットだけでなくデメリット、リスク、潜在的な課題についても鋭く指摘し合ってください。
・意見を述べる際は、そのペルソナの立場から見た「根拠」と「理由」を必ず明確にしてください。
・意見を否定・批判する場合は、必ず代替案や改善案を提示してください。
・専門用語や抽象的な表現は避け、住民にも理解できるよう、可能な限り具体的で分かりやすい言葉を使ってください。
会議シミュレーションが完了した後、ここまでの議論全体を俯瞰し、以下の構成で「政策形成のための論点整理レポート」を作成してください。
1はじめに(テーマの背景と議論の目的)
・なぜこのテーマが重要なのか、背景を簡潔に説明する。
・この議論で何が明らかになったのか、総括を記述する。
2各視点からの主要な意見
・「ベテラン職員」「若手職員」「住民代表」「専門家」「民間企業」の各視点から出された最も重要な意見や懸念点を、それぞれ箇条書きで整理する。
3議論の中から生まれた新たな視点やアイデア
・当初は想定されていなかったが、議論が深まる中で生まれた新しい発見、画期的なアイデア、視点の転換などをまとめる。
4主要な論点と対立軸の整理
・議論の中で特に意見が分かれたポイント(トレードオフの関係にあるものなど)を複数特定し、「Aという意見(根拠) vs Bという意見(根拠)」のように対立構造を明確にする。
5今後の検討課題(ネクストステップ)
・今回の議論を踏まえ、政策として具体化していくために、今後調査すべきこと、検討すべきこと、関係者と調整すべきことなどを具体的なアクションアイテムとして提案する。
参考 https://www.pref.kyoto.jp/digital/news/documents/0924_prompt.pdf
効果・成果
「まずはChatAIに聞いてみる」という自己解決のプロセスが定着し、職員にとって無くてはならないツールに。今後は、ベテラン職員のノウハウ継承にも活用。
ChatAI導入後にデジタル政策推進課が実施したアンケート調査によると、職員一人あたり年間で約51時間の業務削減効果が得られていることがわかった。また、職員の89%が「RAG機能によって求めている情報にたどり着くまでの時間が大幅に短縮した、または短縮した」と回答している。さらに、80%が「制度所管課への問い合わせ頻度が減った」と回答した。
飯村氏は「導入からわずか数ヶ月で、ChatAIは職員にとって無くてはならないツールとなっています。利用職員の88%が『満足』または『やや満足』と回答し、98%が『これからも継続して利用したい』と回答しています」と効果を実感している。
ChatAIは業務効率化に加え、職員の働き方や業務の質の改善にも貢献している。「職員からは『テレワーク中や上司・先輩が不在の時でも、自分で疑問を解消できるようになった』という声があがっています。また、手引きを見ればわかるような単純な質問が減少傾向にあり、ChatAIで調べたうえで、AIではなく人が判断すべき内容に関する相談に変わり始めています。」と、飯村氏は庁内での変化を感じている。
これは、職員が問い合わせる前に「まずChatAIに聞いてみる」という自己解決のプロセスが定着したことを意味する。しかし、デジタル政策推進課はさらに先を見据えているようだ。現在は「情報検索」でChatAIを活用する職員が最も多いが、より創造的な使い方も浸透させていきたいと考えている。
その使い道の一つは、中小企業への技術支援などを行う所属での活用だ。専門知識をChatAIに蓄積させることで「構想段階ではありますが、経験が浅い職員でも、迅速かつ的確な技術相談の対応が可能になり、支援品質の向上が見込めると考えています」と飯村氏。
さらに「ベテラン職員のノウハウ継承」という活用方法も構想しているようだ。行政の仕事は専門性が高く、個人の知識と経験に頼らざるを得ない部分が多い。ベテラン職員が退職する際、マニュアルには記載されていない暗黙知が失われてしまうのは「財産の損失」ともいえるだろう。「例えば、退職間近のベテラン職員にインタビューを実施し、その録音・録画データを文字起こしします。その『失敗経験』や『リカバリー方法』といったノウハウが詰まった文書ファイルをChatAIに蓄積していけば、マニュアルでは引き継げなかった貴重な財産を、組織として継承していけるのではないかと考えています」と、飯村氏は情報検索ツールから、業務の質を高め、組織の知見を未来に繋ぐパートナーとしてChatAIの活用を広めていくことにも取り組んでいる。
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