年間150時間かかっていた報告書作成業務が60分以下に
製薬企業の品質管理業務を変えた生成AI活用方法

2008年に『協和発酵工業』と『キリンファーマ』の合併により誕生した『協和キリン株式会社』。両社が培ってきたバイオテクノロジー、抗体医薬を強みとする同社は、日本発のグローバル・スペシャリティファーマ掲げ、確かな技術、そして先進的で画期的な創薬技術を駆使して、多様な新薬・治療法の研究に取り組み続けている。さらに、バイオ医薬品の開発スピードアップや、研究・開発が進みにくいとされている希少・難治性疾患への取り組み・支援など、多角的な医薬品の研究・開発・製造も展開。あらゆる人々への健康と豊かさへの貢献を目指している。

こうした高度な技術と時代に即した新たな視点で、独自研究を進め安全な品質の製品開発・提供を担保し、同時に業務改善にも注力をしてきたのは同社の高崎品質ユニット。生成AIの浸透・普及に伴い、2024年7月にユーザーローカル社のChatAIを導入した。ここでは 高崎品質ユニット品質管理部のイノベーショングループ・石渡拓也氏にお話を伺い、導入経緯から確かな業務品質の担保と効率化を両立し、大きな成果を出した活用方法などを伺っていく。

協和キリン株式会社
品質本部 高崎品質ユニット
品質管理部 イノベーショングループ チームリーダー (インタビュー当時)
石渡拓也 氏

導入背景

ボトルネックとなっていた報告書の作成・チェック業務改善などを目指しChatAIを導入
従量課金がなく、充実した機能が大きな魅力

医薬品の製造現場では、品質管理・品質保証業務の高度化と効率化が強く求められている。同社でも同様の課題を抱えており、どのような背景があったのか。石渡氏によると、3年ほど前(2022年)から品質管理部を中心に大きな業務改善の取り組みが始まったという。

医薬品製造における品質管理・品質保証では、『GMP』といった厳格な基準を順守しながら、各種試験結果の評価や記録、報告書などの文書を適切に作成・管理する必要がある。内容の考察や記載の標準化が欠かせず、さらに複数の担当者による確認プロセスもあるため、どうしても手間や時間がかかってしまうという課題があった。

生成AIが話題になる以前は、定型的な事務作業の一部にRPAを活用して効率化を図っていたが、試験結果の考察や変更管理・逸脱対応に関する文書作成など、人の判断が求められる業務はRPAだけでは対応できず、課題となっていた。また、文書の内容や書き方は担当者によるばらつきが生じやすく、品質関連文書全体の統一も課題となっていた、というのが当時の状況だ。

そんな状況の中で、生成AIが急速に進化し、世の中でも一気に利用が広まってきた。そのタイミングで、同社でも生成AIツールの導入を本格的に検討する動きが始まった。情報管理やセキュリティ面への対策はもちろん、実際の業務でどこまで使えるのかという点も重視したうえで、2024年7月にユーザーローカル社のChatAIを導入することに決めた。

導入の決め手は、実際に使ってみて他のツールと比べて操作感や使い心地が圧倒的に良かったこと。さらに、最新のAIモデルがすぐに使える点も大きなポイントになった。料金体系に関しても、ChatAIは従量課金ではなくユーザー数ごとの定額制になっているので、利用頻度にかかわらず費用が一定で、コスト面でも安心して導入できたという。「使う側としては、利用量で課金が変動する仕組みだとどうしても抵抗感があるが、定額制で精度の高い機能が次々とアップデートされるので、ChatAIの活用の幅を今後もどんどん広げていけると考えている」と石渡氏は話す。

活用方法

様々な資料から適切な情報抽出・要約を可能に
細やかなチェック・考察に膨大な工数が必要だった報告書作成も効率化

まず取り組んだのが「ドキュメント機能」の活用だ。品質管理部では、数多く存在するシステムの導入や運用管理に必要なマニュアルなどの各種資料から、必要な情報を抜き出したり要約したりする場面が多い。ここでChatAIを使うと、精度の高い情報抽出と要約ができる。出力される内容の正確さやスピードに満足しているメンバーが多く、要点の抜き出しやまとめ作業の効率が向上していることを実感できる場面だ。

「ChatAIは、品質関連文書や報告書の作成・確認作業においても有効に機能しています。試験結果などを踏まえて内容を考察・検討し、文書としてまとめたうえで、複数の担当者がレビューを行う過程では、人手による細かな確認に時間がかかるという課題がありました。そこで、必要に応じてChatAIにドラフトの確認や観点の整理をさせることで、記載すべき項目のモレや抜けがないか、内容がGMPや社内規定などに沿っているかといった定性的なチェックを、従来より効率的に進められるようになっています。ChatAIは単なる文章生成にとどまらず、資料構成や検討観点の洗い出し、必要項目の網羅的な確認をサポートするツールとして、日々の業務を補助する役割を担っています。」と石渡氏。

「また、国の定める手順や品質基準から逸脱が発生した場合、その原因究明や再発防止のための検討・分析が不可欠ですが、こうした原因分析の場面でもChatAIを活用しています。たとえば逸脱記録の内容をChatAIに入力し考察の手がかりを得る、といった使い方も実際に浸透してきています。」

このほか、部内で業務改善ツールを開発・検証する際のプログラミング支援にもChatAIを活用している。「たとえば、報告書作成の自動化や、日々の定型文書生成といったツールを企画する際、まずはプロンプトだけでどこまで業務を自動化できるかをChatAIで検証しています。プロンプトによるアプローチで満足のいく精度が得られない場合は、実際にプログラムとしてコードを作成しますが、その際のコード作成やデータ処理手順など技術的なポイントについても、ChatAIがサポート役を果たしています。さらに、作成したツールの精度チェックやユーザーとしての利用感の確認など、業務改善全体のプロセスにChatAIが役立っています」と、ChatAIの利便性を説明してくれた。

効果・成果

年間で150時間ほどかかっていた年間報告書作成時間が、わずか60分以下に
ツール開発の外注コストも大幅削減に成功

石渡氏は、ChatAIがドキュメント検索、報告書作成サポート、プログラム開発補助など、複数の業務シーンで目に見える効果を発揮していると語る。具体的な成果として、たとえば「年次報告書作成」の効率化がある。従来は、3ヵ月ごとにいくつかの製品分の報告書を作成する際、担当者が数日間かかりきりになり、精神的負担も大きかった。そこでツールを自社開発することになったが、ツール開発する上での、プロンプトのテスト、コーディング補助にChatAIを活用した。「中でもプロンプトのテストは複数のモデルを切り替えながらテストできるため、モデルによる差も確認することができ、非常に有用でした。ChatAIを活用して開発したツールのおかげで、年間で約150時間かかっていた報告書作成の工数が1時間以下に大幅短縮され、外部に依頼していたシステム開発の発注コストの削減も実現できた点も大きな成果と感じています」と話してくれた。

他にも、企画面でのサポートで非常に重宝しています。たとえばDX推進や新規施策の検討時には、アイディア出しやDeepResearch機能を使用した関連テーマのリサーチなど、以前は多くの時間がかかったプロセスも、より速く、網羅的に進められるようになった。

「企画の初期段階では、課題が漠然としていることが少なくありません。『現場で何となく不便そうにしている』『この業務は非効率ではないか』といった感覚レベルの気づきをChatAIに投げかけることで、類似の業務課題やよくあるボトルネック、他社・他業界での解決アプローチ、想定されるリスクや導入時の障壁といった観点を一気に洗い出せる点は非常に有用です。また、『この課題が放置された場合の影響』や『ステークホルダーごとの見え方』を整理させることで、課題の優先度やインパクトを多面的に評価することにも役立っています。私にとってChatAIは、答えを決めてくれる存在ではなく、課題探索から企画の具体化までを共に進める“思考のパートナー”という位置づけです。」と、石渡氏は教えてくれた。

社内では生成AI活用への関心が高まっており、「ChatAIを使ってこういう仕組みやツールはできないか」といった相談も増加。石渡氏は「社員の自発的なアイディアやチャレンジの動きも強まっている。ChatAIの活用範囲を広げていくことで、今後さらなる業務革新と効率化を目指していきたい」と今後の展望を語っている。

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