調査や検索時間を短縮して“創造”にかける時間が30%増加
防災業界ならではの専門的な業務や膨大な資料をChatAIと連携し、業務効率化を実現

創業から100年以上の歴史を誇り、自動火災報知設備や消火設備をはじめとする各種防災システムを通じて社会の安全に貢献する『能美防災株式会社』(以下、能美防災)。同社は長年にわたり日本の安心安全を守り続けてきた実績を持ちながらも、社会情勢の変化に対応すべく変革を続けている。同社が掲げている「中長期ビジョン2028 ~期待の先をカタチに~」] では、DX推進や新規事業領域の開拓、人材育成などが含まれており、防災業界をリードする会社であり続けるという思いを示した。特に近年は火災から設備故障までトラブル対応を一元管理できる防災支援システムTASKisのリリース、ドローンを活用して人手不足や高所作業の危険性といった課題に対処するメンテナンスや社内のペーパーレス化、備蓄品を寄付できる「ストクル+(プラス)」でSDGsへの貢献など、幅広い活動を展開している。

誰もが安心して安全に暮らせる生活を実現する同社では、業務効率化と創造的業務に注力するため、「ユーザーローカル ChatAI(以下、ChatAI)」を導入した。ここでは、ChatAI導入の背景や社内展開の成功事例、具体的な活用方法などについてお話を伺っていく。

能美防災株式会社
技術本部 第1技術部 イノベーション推進室 浦田 有也氏
技術本部 第1技術部 第1応用技術課 野澤 孝甫氏
技術本部 第1技術部 火災管理課 嶋田 知弘氏

導入背景

専門的かつ膨大な資料を扱う防災業界だからこそ重視したRAGの使いやすさドキュメント読み込み、高精度 セキュリティを評価しChatAI導入を決定

能美防災では2023年8月から生成AIの活用を始めていたが、当初は活用の幅が限られていることから、社内で十分に浸透していなかった。浦田氏は「生成AIを初めて社内で利用した際は、ドキュメントが読み込めない点や選べる言語モデルが限られていた点で使いづらさを感じていました。また、生成AIに興味がある人だけが使っている程度で、実務で活用できている実感があまりありませんでした」と当時を振り返る。

そこで、浦田氏が生成AIについて調べている中で知ったChatAIの説明会へ参加し、無料のトライアルに申し込んだという。トライアルでは、浦田氏が所属するイノベーション推進室のメンバーがChatAIを体験し、効果を確認した。「イノベーション推進室内で試した結果、課題として感じられていたドキュメントを読み込ませられる点や、言語モデルが複数選べる点が評価されました。社内で有用性を共有し、上司や役員とも相談した結果、技術本部で本格的に導入することになりました」と浦田氏は語る。

技術本部 第1技術部 イノベーション推進室 浦田 有也氏

能美防災のように専門性の高い分野を扱う企業にとっては、マニュアルや仕様書などの資料をアップロードできる機能が必須だったという。嶋田氏は「私たちは防災業界というニッチな分野で働いています。一般的な情報はネット上にあっても、専門的な情報は社内の技術文書や論文といった資料からしか得られません。そのため、ドキュメントを読み込ませ、その内容について対話ができるChatAIは、私たちが必要としていたサービスでした」と評価した。

また、セキュアな環境で使えることも重要な条件だった。「能美防災は長い歴史があるので、資料の量が膨大です。製品の開発仕様書や不具合の報告書といった世に出ていない資料も多く、それらを一般的な生成AIに読み込ませて学習されてはいきません。しかし、業務では大量の資料の内容を検索したり、まとめたりする必要があります。セキュアな環境で使えるChatAIは、その課題も解決してくれました」と野澤氏は安心して使える環境であることを強調した。

野澤氏は最初にChatAIを使用した際、精度の高さも印象的だったという。「昔の生成AIは精度が低く、初期に触った人は印象がよくない場合もあります。しかし、ChatAIは最新の言語モデルが使えて精度が高いため、自信を持って使うことをおすすめできます」と語った。

技術本部 第1技術部 第1応用技術課 野澤 孝甫氏

活用方法

ChatAIを活用するキーマンの任命が社内浸透のカギ
翻訳やシステム開発などの活用事例を積極的に横展開

ChatAIの利用を広げるにあたり、能美防災では前述のイノベーション推進室でのトライアルからの技術本部での導入という「小規模PoCで活用開始」以外にも、「キーマンを主導とした活用促進開」「共有会で知見を水平展開」といった施策を行い、社内に生成AIの活用を普及させていった。

浦田氏は、ChatAIのアカウントを最初に付与するキーマンの選定が組織内浸透の大きな成功要因だったと考える。「技術本部内の各課長にキーマン候補を推薦していただいたところ、新しい技術への関心が高く、日々の業務課題を積極的に解決しようとする意欲的な人材が集まりました。これらのキーマンたちは日常業務でChatAIを実践的に活用し、その具体的な事例を発表する定期的な共有会が非常に効果的でした。また、各キーマンが所属部所内の会議で ChatAIの検証結果や活用方法について主体的に議論を展開してくれました。さらに、キーマンからの依頼を受けて、私が各部署に出向き個別説明会を実施し、キーマン以外の社員にもChatAIの具体的な利用価値を広げることができました。このように、適切なキーマン選定と、彼らを起点とした普及活動の組み合わせが、全社的な浸透の大きな推進力となっています。意欲あるキーマンたちが関係部所とのハブの役割を担うことで、連鎖的な波及と業務定着が可能になると実感しています」と浦田氏。

嶋田氏と野澤氏もキーマンとしてChatAIの活用と普及を進めている。嶋田氏は「日々の業務に追われている中、新しいツールの検証は大変なこともあります。しかし、四半期ごとの共有会で情報交換をする場があるので、責任感を持ってChatAIの活用と普及に取り組めています。ChatAIの普及において、担当者を立てることはとても効果があると感じています」と述べた。

技術本部 第1技術部 火災管理課 嶋田 知弘氏

四半期ごとの共有会では、社内で生まれたChatAIのさまざまな活用方法の横展開にも取り組んでいる。野澤氏は「英語の製品カタログの日本語翻訳に利用しています。ただ翻訳して見比べるだけでは、英語と日本語の対応箇所がわかりづらくなってしまいます。そこでHTML形式でコードを書いてもらい、それをコピーして保存することで、元の文章と対応する箇所がわかる形で訳が表示されるようにしました」と自身の活用法を説明した。

嶋田氏は「社内の会議スペースを予約する際、以前はポータルサイトにアクセスして予約する必要がありました。しかし、急な面談などではサイトで予約してから会議スペースに向かうといった手間がかかります。そこで、会議スペース横にモニターを設置してタッチパネルで直感的に予約し、すぐに入室できるシステムが開発されました。これはChatAIでコードを書き、ポータルサイトにAPIで連携することで実装できました」と、社員の負担となっていた業務の改善に活用した事例を紹介した。

ChatAIで開発した会議室予約システムの画面
会議室の予約が社内ポータルに反映

また、社内へChatAIを浸透させる施策は他にもあるという。「ChatAIにはお知らせ機能があるので、新しい情報を常にキャッチできます。しかし、日常業務で忙しく見落としてしまう人もいるので、グループチャット内で私からも情報共有しています。どこからでも情報を得られる状態を作ることを意識しました」と、浦田氏は社内で情報格差が生じないためにとっている施策を教えてくれた。

効果・成果

1週間かかっていたプログラミングが一瞬で完成
さまざまな活用促進策でチャット数は導入時の1.5倍超

ChatAIの導入により、能美防災ではあらゆる場面で業務効率化が進んでいる。新たな企画や施策を考えることにかけられる時間を増やすことができていると語るのは嶋田氏だ。「私たちが仕事で扱う特許文献や法令文書は専門性が高く、正しく理解するのは難しいものです。また、消防法などの法令や省庁の文献を読む機会も多くあります。ChatAIを使えば、それらを理解しやすく要約してくれます。特に若手社員はお客様からの問い合わせにも対応しているので、検索や調査に1日の半分以上の時間を費やしていました。しかし、ChatAIを活用することで技術文書や論文などを理解する工数が大幅に削減され、以前より30%ほど創造業務に費やす時間が増えています」

文書の要約で終わらず、技術文書からFAQを作成することにもChatAIを活用しているそうだ。「技術文書を読み込ませてFAQを作ってもらうことに加え、ユーザーが知りたがりそうだが不足している内容も考えてもらうケースもあります」(嶋田氏)と幅広い活用方法を示した。

能美防災株式会社のPickupプロンプト
技術文書のFAQを作成するためのプロンプト
対象技術文書をレビューし、「文書中で十分に扱われていない、あるいは読者が追加で知りたいと思うであろう質問」をリストアップしてください。
質問は下記5カテゴリに分類し、箇条書きで簡潔に記載してください。
仕様・性能
設置/操作手順
保守・点検・更新
法規・安全・規格適合
他システムとの連携・拡張
※文書で既に十分説明されている事項は含めないでください。

野澤氏も、1週間かかることもあったというプログラミング作業時間の劇的な削減効果を語る。た。「私は多種多様な機器から測定したデータを比較するグラフを作成するためPythonなどのプログラミングを使っています。機器ごとにデータフォーマットが異なるため、以前は1つのグラフを作るのに1週間かかっていたこともありましたが、ChatAIにコードを書いてもらうと一瞬で終わります。たとえエラーが出ても、エラーコードをChatAIに貼り付ければ解決策を提案してくれるので、効率よく作業できるようになりました」

ChatAIで生成したプログラミングコードによる機器データ比較グラフ

現場での活用が進む能美防災では、ChatAI導入当初と比べて月間のチャット数が1.5倍以上増加しており、現場での活用が着実に拡大している。この背景には共有会でChatAIの水平展開ができていることに加え、ユーザーローカルによるワークショップの効果もあるという。

「プロンプトに関するワークショップを開いていただいたおかげで、AIについて興味を持つ社員は確実に増えました。その後の共有会では、ワークショップで学んだ内容から派生した使い方をしている人も見られました。オンラインではなく対面で丁寧に教えてくださったのも嬉しかったですね」と浦田氏は振り返る。

能美防災では、今後もChatAIのユーザー拡大や業務効率化を図っていくことを考えている。浦田氏は技術本部のみならず全社にAIを普及させ、創造の時間を確保するために「AI導入計画」も作成しているという。「今は興味のある社員がChatAIを使い、共有会であらゆる発信をしてくれています。最近では新入社員の中でChatAIを積極的に使い、自らの学習や業務効率化に活かしている人も出てきました。引き続き社内の事例を共有し、全社横断で業務効率化を進めていきたいと考えています」と今後の展望を語った。

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