議事録作成時間を70%以上削減、問い合わせ対応も3分の1に削減
ネットワークセキュリティ企業がChatAIで進める事業シフト

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提案から構築・保守サービスまで、統合ITインフラソリューションを提供するエイチ・シー・ネットワークス株式会社(以下、HCNET)。ワンストップでサービスを提供できることが同社の強みであり、お客様の負担軽減や信頼を生んでいる。また、企業や学校法人、医療機関、自治体など、幅広い領域で課題解決に貢献しているのも大きな特徴だ。

ITを専門とする同社では、早期から生成AIの可能性に着目し、導入を試みていた。しかし、当初は思ったように活用が進まず、検索エンジンの代わりに使われる程度だったという。そこで改めて社内での活用と浸透を促進するために「ユーザーローカル ChatAI」(以下、ChatAI)を導入。代表取締役社長の田中宗氏が自ら旗を振り、全社員に生成AI活用の方針を示した。現在では、長いと1週間を要していた議事録作成の効率化や、SE実務におけるコマンド変換など、業務の隅々に生成AIが浸透している。ここでは、HCNETにおけるChatAI導入の背景や浸透の施策、活用方法などについて、お話を伺っていく。

エイチ・シー・ネットワークス株式会社
エイチ・シー・ネットワークス株式会社
代表取締役社長 田中 宗 氏

導入背景

「参照資料は400ページ超、似た質問が毎日届く」
ボトルネックとなっていた社内の問い合わせ業務を生成AIで解決

顧客のITインフラを支えるHCNETでは社内業務のデジタル化を進めており、コロナ禍以前から捺印文化の廃止や、スマートフォンでの承認業務といった効率化を推進してきた。しかし、田中氏は「ITによる効率化は進めていたものの、DXという観点ではまだアナログな部分が残っていました。世の中の流れとして生成AIを活用していかなければならないという機運の中で、HCNETとしても導入を決めました」と振り返る。

そこで、同社では約50名の社員に生成AIツールのライセンスを配布し、活用を促した。しかし、期待に反して活用は進まなかったという。「当時は利用者に対して使い方の指導ができず、『検索エンジンが少し賢くなったもの』程度で止まってしまいました。経営側からも目的や動機付けを明確に示せていなかったことが反省点でした」と田中氏は語る。

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一方で、現場では業務における課題が浮き彫りになっていた。それは、自社製品の開発部隊が顧客からの問い合わせを受けるTAC(テクニカル アシスタンス センター)業務の負荷だ。「開発部隊には、プロダクトに対する質問や仕様の確認が日々何十通も入り、それらを精査するとほとんどが似たような質問です。しかし、参照すべきマニュアルは400ページに及ぶものもあり、人で対応するのはかなり大変でした。AIを使えば、TAC業務を効率化できるのではないかと考えていました」と田中氏は振り返る。

そこでHCNETが選んだツールがChatAIだった。田中氏はChatAIの魅力について「ChatAIで魅力的だったのは、ChatGPTやGemini、Claudeなど複数のAIモデルを使えることです。特定のAIに決め打ちするのではなく、色々なモデルを使いながら視野を広げていくという意味で、ChatAIが適していると考えました」と教えてくれた。

さらに、ChatAIには現場が積極的に使える機能が揃っていたことも導入の後押しとなったという。セキュアな環境で使うことができ、使用回数に上限がないため、ユーザーは入力内容や回数を気にする必要がない。

また、参照資料を指定して特定の役割を持ったチャットを作成できる「カスタムチャット」機能も、HCNETと相性のいいものだった。同社ではシステムごとにマニュアルが存在しており、ケースごとにどのマニュアルを参照すべきかがわかりづらかったという。特に、年間30〜50名の中途社員が入ってくる同社にとって、社内Q&Aが作れる「カスタムチャット」は教育と学習の効率化にも貢献できるものだった。

活用方法

全社員が受講した研修で毎日の利用者が約1.4倍に増加
「それはAIで対応しよう」という会話が自然に出るようになった

ChatAIの導入以前から、田中氏は全社会議においてAIで生成した画像を披露したり、自身が使っている姿を社員に見せたりと、社内の気運醸成を行っていた。時には、他社の生成AIの活用状況を共有していたこともあり、導入への反対意見はなかったという。

しかし、ChatAIは導入して終わりではない。活用している人としていない人で差を出さずに浸透させることが大切だ。そこでHCNETでは、全社員が対象となる初級・応用編の研修と、各本部からメンバーを選抜したワークショップを開催した。田中氏は「いきなり全員が使いこなすのは難しいでしょう。しかし、社員の3分の1から半分が使い出せば、『自分も使わないと』という空気が生まれます。その連鎖が続き、会議の中で『それはAIで対応しよう』という会話が自然発生するような環境を狙いました」と語る。

研修とワークショップを通じて、HCNETにおけるChatAIの活用は大きく進んだ。以前は1日あたりのユーザー数が90人ほどだったところ、今では130人ほどにまで増加している。研修やワークショップの満足度は80%以上と高い水準を推移しており、「ワークショップをさらに拡大して実施した方がいい」「若い社員にも受けてもらうべきだ」と前向きな声も多く見られたという。

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研修を通じて利用の促進を行っている

これらの施策を通じて、HCNETにおけるChatAIの活用は、さまざまな場面で見られるようになった。ChatAIの導入前に感じていた課題であるTAC業務もその一つだ。ドキュメント機能を活用してマニュアルや教師データを読み込ませることで、該当システムや部門に関するQ&Aができるチャットとして展開されているようだ。

また、管理部門向けのQ&Aや、自社製品の手配業務に答えるチャットボットをカスタムチャットとして展開されている。

「作成したカスタムチャットを『HCQA』と名付け、管理部門向けのQ&Aシステムや、自社製品の手配業務に答える専用環境を構築しました。以前はファイルサーバーを探し回ってマニュアルを特定していた作業が、ChatAIに聞くだけで完了します」と田中氏は教えてくれた。

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自社マニュアルを学習させた専用環境を構築し、社内資料を探す手間を軽減

統合ITインフラベンダーであるHCNETでは、SEがプロダクトの比較表作成や、バグの発見でChatAIを活用している。「プロダクトの比較表を人の手で作成するのは時間がかかりますが、まずChatAIで概略を作ってもらうことで効率化できます。また、バグやリリースノートの情報を入れた上で、自社製品に影響する内容がないかを確認することもあります」と田中氏は教えてくれた。

SEがChatAIを活用できる幅は広く、機器を設定するコマンドの作成や調査に活用しているようだ。例えば、A社製のコンフィグレーション(設定情報)をB社用に変換する作業は手作業だと工数がかかってしまうため、ChatAIに任せているという。また、異常時のログファイルを読み込ませて原因を推測させるといった使い方も定着しつつあるようだ。

現場だけでなく、田中氏自身を含む経営層もChatAIを思考のパートナーとして活用している。「他社の中期経営計画を読み込ませて要約し、自社の戦略や計画案にはどのような可能性があるかといった壁打ちを行っています。0から1を作るのは大変ですが、AIが叩き台を作ってくれることで、議論の質が格段に上がりました」と田中氏は効果を実感している。

効果・成果

議事録作成時間を70%以上削減
AIの活用度合いを人事制度にも組み込み、定着を加速

ChatAIの導入は、HCNETに劇的な「時間の創出」と「文化の変革」をもたらした。最も顕著な成果は、議事録作成のスピードだ。「以前は丸1日かけて行われる会議の録音を、翌日また1日かけて文字起こしし、そこから数日かけて整理していました。これでは議事録の完成まで1週間かかることも珍しくありません。それが今では、会議が終わった直後にAIで草案ができ、遅くても翌日には完成します」と田中氏は効果を教えてくれた。従来は最大7日を要していた作業が、現在は2日程度完了するため、議事録作成時間は70%以上削減されたことになる。

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会議の内容をリアルタイムで文字起こしし、ワンクリックで議事録が作成できる

さらにHCNETでは、会議テーマごとに録音を切り替えるなど、ChatAIの精度を最大化するための工夫を行っている。例えば、「営業」「SE」「管理」とセクションを分けて取り込むことで、文脈に沿った正確な要約を実現している。

また、SE部門の問い合わせ対応も大幅に削減されている。「回答を作るのに15〜30分かかっていた技術的な問い合わせ対応が、ChatAIの活用により3分の1程度の時間で済むようになりました。いきなり完璧を求めるのではなく、まずはChatAIに叩き台を作らせることが、全体の工数削減に大きく寄与しています」と田中氏は語る。

業務の効率化以外にも、HCNETでは社員の意識に変化が見られているという。会議中には、「とりあえずAIに聞いてみよう」という会話が自然に出るようになったのだ。田中氏は「その場でChatAIの画面を映しながら議論するケースも増えました」と、導入前に描いていた環境になりつつあることを感じている。

田中氏は、ChatAI導入の目的は単なる「時短」ではないと強調する。「私は『業務』と『仕事』を分けて考えます。型が決まっていることは『業務』であり、これらはAIに移していくべきです。人間は、AIができない付加価値の創造、つまり『仕事』に集中し、個人の魅力やレベルを上げていかなければいけません」と田中氏。

同社は人事評価制度にも「付加価値生産性」の観点を組み込み、AIをいかに使いこなして価値を創出したかを全社員のミッションとする考えだ。「10年目のベテランが『業務』だと思っていることを、AIを使えば1年目の新人が半年でこなせるようになるでしょう。そうすれば、新人はもっと早く次のステップの『仕事』に挑戦できます。人とAIの力を組み合わせ、人的資本を最大化させていきたいと考えています」と、田中氏は今後の展望について語ってくれた。

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